脳神経内科とは
脳は身体中に張り巡らされた末梢神経を介して、我々のあらゆる活動を支配しています。しかし、脳や脊髄は骨に囲まれていて、外から直接観察することができません。その神経組織の働きを探り、病態を明らかにし、治療法を開発する学問が神経学(Neurology)です。
神経学は古くからヨーロッパで発展し、19世紀フランスのシャルコーに代表される神経学者たちによって体系化されてきました。そのシャルコー門下の三浦謹之助らにより1902年に日本神経學会が創設され、日本の神経学が誕生しました。しかし、この学会は1935年に日本精神神経学会と名称を変え、精神疾患を対象とする学会となって今に至ります。一方、神経疾患の臨床は、一部の精神科や内科の医師達が担当していましたが、その数は少なく、本来の診療科名である神経科という名称も使用されなくなっていきました。
この状況を打破すべく、主に内科の中で神経学を専攻してきた医師や研究者が中心となって、1960年に日本神経学会を再興します。それに伴って、診療科として神経内科の名称が使用されるようになりました。しかしこの名称は却って混乱を招き、神経内科とはどんな診療科なのか、一般の理解はなかなか得られませんでした。
そこで2018年日本神経学会は、診療科名を脳神経内科とすることを決定しました。すでに診療科として確立している脳神経外科の、カウンターパートとしての脳神経内科です。脳神経外科医が脳における外科的な診断と治療のエキスパートであることに対して、脳神経内科は非侵襲的な診断と治療のエキスパートです。
現在の専門医制度が始まる遥か昔、1975年から日本神経学会は専門医試験を実施しています。神経疾患の臨床では、身体診察による局在診断がもっとも難しく、その修練を重ねた者のみが、呼称できる専門医です。試験官の目の前で、与えられた課題の診察を実際に行い、評価を受けます。しかも近年、神経科学の進歩により、夥しい数の薬物療法が開発されており、そういった治療薬の使い分けにも精通することが日本神経学会専門医の必須条件です。
21世紀は「脳の世紀」と呼ばれています。医学の進歩を診療の場で実践する脳神経内科医の役割は、これからも益々重要となるでしょう。
神経診察(神経学的検査)について
医療行為は4つの要素から成り立っています。問診(医療面接)、診察、検査、治療(投薬や手術)です。その中で神経内科が他の診療科と大きく異なっているのは「神経診察」です。
例えば、お腹が痛くなれば内科に行って、お腹を診てもらいますし、膝が痛くなったら整形外科で膝の診察を受けることになります。でも、頭が痛くなって神経内科にかかると、診察は眼の診察から始まって両手両足まで全身を診察します。どうしてかというと、脳は全身に張り巡らされた末梢神経を介して人体のすべてを管理している臓器なので、全身を診察することにより、脳に問題があるかどうか、あるとすれば脳のどこに問題があるかがわかるのです。
「まず、検査」ではなく、どういう検査が必要か、その検査でどの部位を調べることが必要かを、じっくり時間をかけて診察します。その診察手技が神経診察(神経学的検査)であり、神経内科専門医とは、その手技を会得した専門医なのです。
神経内科における画像検査について
現代は画像検査診断装置がものすごく進歩しています。さらに世界中のMRI機器の1/4は日本にあると言われています。人口当たりのMRI台数はダントツの世界一です。日本のどこにいても、気軽にMRI検査を受けることができます。それによって、日本の診療レベルは大幅に向上し、世界一の長寿国となるのに多大な貢献をしています。とりわけ神経内科の診療現場では、脳の中を詳細に評価できるMRIは不可欠の検査となりました。
MRIはCTと違って被曝の心配がなく、解像度も優れています。でもその分、検査をするときは撮像部位を絞り込むことが必要です。病変が検査範囲の外にあれば、部位を変えて何度もMRI検査をしなければなりません。
神経内科医は、神経診察を通じて、画像診断が本当に必要かどうか、もし必要だとしたら、どの部位の画像を撮るのか、その判断こそが重要と考えます。その過程を経ることで、無駄な検査を省き、かえって効率よく治療に入ることができる場合もあるのです。
医療法人かけはし会
脳神経内科 くすのき診療所
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